普通のこと

2020.7.31

以前詩人の谷川俊太郎さんの
企画展に行ってきました。
その中で、「わたしの谷川俊太郎詩集」という
自分が好きな谷川俊太郎さんの作品を15作選んで
自分だけの谷川俊太郎詩集を作ることができる
企画に参加しました。
 

 
学生時代の恩師の影響で
谷川俊太郎さんの詩に触れるようになり、
言葉だけで人の感情を豊かにすることができるのか
と感銘を受けた私にとって
15作を選ぶというのは
とても難しいことでした…。
しかし、数ある作品の中でも私にとってこれだけは
外せないという作品があるので紹介します。
 
 
「ここ」
どっかに行こうと私が言う
どこに行こうかとあなたが言う
ここもいいなと私が言う
ここでもいいねとあなたが言う
言ってるうちに日が暮れて
ここがどこかになっていく
 
 
夫婦や恋人との会話でしょうか。
他愛もない会話をしている「ここ」が
「私」と「あなた」の目には見えない
「空間」となって
現れていることが
最後の一文で優しく表現されています。
 
「空間」というものは建築が生み出すものだと
思っていた私に、
日常の何気ないひと時の中に
「空間」は生まれているのだということを
気づかせてくれました。
その気づきと同時に、建築でなくても
空間を生むことができるのであれば、
建築をつくる私には何ができるのか…と
考えるきっかけにもなりました。
 
考えに考えを重ねた結果、
『目に見えない「空間」に形を与えること』が
私にできることだという単純な答えに
辿りつきました。
 
なんだ普通だな…。と思われるかもしれません。
谷川俊太郎さんが「ここ」で表現したような
何気ない当たり前の日常が、
心地よく、豊かだと当たり前に思えるような
形のある「空間」をつくる。
私はそんな「普通のこと」ができるように
なりたいのです。
 
Horikawa