懐かしい心地よさ

2019.9.20

どこか新しい場所へ出かけた時、
なんだか居心地がいいなと感じる場所は
それまで自分が体験したことのない場所であることも
ありますが、
それとは別になんだか懐かしい感じが
するという安心感や
落ち着きからくる居心地の良さを
感じる場所もあるような気がします。
 
私の場合は、子供の頃は風で膨らんだカーテンの中や
雨の日には積み重ねた傘の下に入って遊ぶのが
好きだったせいか、
出かけた先でカーテンからの
淡い光を見ると
しばらくは電気を消して
ぼーっと過ごすのがとても心地よく感じます。
 

 
作っているものは違いますが
昨年亡くなった映画監督、高畑勲さんの
「現実と作品世界のあいだで
自由に風が吹き通うような
「思いやり型」の作品を
つくりたいと思ってきました。」
という言葉がずっと気になっていました。
 

 
監督としての最後の作品である「かぐや姫の物語」
では
背景は透明水彩でぼんやりと、あえて描きすぎず
余白として残すことで
見る人がそれぞれ過去に
見てきたふるさとの景色を想像し、
思いを寄せることの出来る作品となるように考え、
制作されたといいます。
 
私たちが住宅の居心地を考える際にも、
こちらの体験した記憶のみを頼りに
誰かにとっての新しい居心地の良さを提案
する
だけではなく、その人が過去に見てきたものや
感じた居心地の話
を交えることによって提案できる、
現在と過去を行き来するような
懐かしい居心地の良さもあるのではないでしょうか。
いつか、住まう人の記憶の間を
自由に風が吹き通うような
住まいの提案が出来たらと思います。
 
by Yanai