すだれの情緒

2019.8.30

実家では、夏になると軒先にすだれを掛けます。
久しぶりに実家でゆっくり夏を過ごすと、
天気や時間によって
移り変わるすだれ越しの光を
ついつい眺めてしまいます。
 
夏が来たわくわく感、すだれ越しに見える庭の深い緑、
すだれが夕日でオレンジに染まるさま、ヒグラシの声。
不思議と懐かしい気分になるのです。
 
子供のころから、なんとなく、
このすだれが好きでした。
 
吉島家住宅という文化財の古民家を訪れたとき、
以前冬に来た時となにかが違う…と感じたところ、
座敷の襖がすだれに衣替えされていて、
その情緒に感動したことがあります。
 

 
夏のしつらえに衣替えした座敷を夏座敷と呼ぶそうで、
昭和の中ごろまでは、こういった風習が残っていた
そうです。
 
すだれには、直射日光を遮ったり、風を通すなど、
生活道具としての実質的な効果がありますが、
それ以上に、その空間に内包感と解放感が共存して
いることが魅力ではないでしょうか。
包まれているけれど、閉じ込められていない、
あいまいな境界。
新緑の森の中で空を見上げたときと、
おなじ気持ちを感じました。
 

 
ネイエの住宅でも、簾戸(すど)という、障子紙の
代わりに
すだれをはめ込んだ建具を取り入れることが
あります。
微力ながら、こうして古き良き日本の住宅の味わいを
残してゆけたらよいと思っています。
 
by Shimizu