借景

2019.2.15

京都にある圓通寺には比叡山を借景とする枯山水庭園があります。
 
今回はじめて訪れたのですが、質素に作られた枯山水庭園の奥、
はるか向こうに比叡山の山並みが背景となってとても美しい景色を創りあげておりました。

四季に応じて日々刻々と変わる庭の景色は毎日違う表情をしていて
一度として同じではないと帰り際に圓通寺の和尚さんから教えていただきました。
 
毎日庭を見続けている和尚さんのお話はとても勉強になりました。
 
借景は背景となる自然環境が大きく変わってしまうとその景色は2度と見られなくなってしまい、
ましてや、圓通寺のように遠くの比叡山を借景にしているとそこまでの間にいつどんな建物が完成するかわからない、
この景色を守り続けることはとても大変なことだと教えていただきました。
 
真っ暗な庭に月明かりが綺麗に差し込んだ1枚の写真を和尚さんに見せていただきました。
数十年前の圓通寺は周りに街の光がなく、月明かりぐらいしかなかったとのことです。
その写真は白黒の写真ではありましたが、とても魅力的に感じました。
 
寺の周りも住宅地として発展してきており、その綺麗な写真の風景は今では見られないそうです。
 
新しい建物を設計するということは今までそこにあった環境を変えてしまう行為であるということを感じ、
自分の設計した建物がその場所をどう変えてしまうのかをしっかりと考えて設計することの大事さを感じました。
 

和尚さんはとてもお話好きで、初めて訪れた私にその他にもたくさんお寺の話を聞かせてくれました。
京都で借景庭園を見られる際は、圓通寺は東向き、修学院離宮が南向き、天龍寺が西向きの借景庭園で太陽の光とともに見て回るのがおすすめだとアドバイスいただきました。
次回京都を訪れる際は実践してみようと思います。

 
by fujikawa